樹木が家の材となるまで
山に育つ木が、建物を構成する材料となりますが、木は単なる建築材料ではなく「いのちあるもの」と捉えられていて、そのいのちを家や堂宮に「使わせていただく」ことに感謝をしながら、伐採します。この「樹木であった頃の木の性質」を、大工は読み取り、よく活かすことを心がけるのです。
杣人(そまびと)
かつては斧で伐っていましたが、昭和30年代以降は、チェーンソーを使うことが一般的です。
製材
かつては「木挽き(こびき)」が、山の木を材にしていました。今では、製材所でその仕事をしています。木の目や木の芯の近くと周縁部などの性質の違いなどを活かしながら、なるべく無駄なく材にする「木取り」が大事です。
木が建築材となる
大工には、社寺を建築したり修理したりする「堂宮大工」、民家や町家など人々の住む家をつくる「家大工」、茶室などをつくる「数寄屋大工」がいます。何百年というスパンで仕事する堂宮大工から、庶民の家をつくる家大工まで、木のいのちを最大限に活かす方向で用いる技術の基本は、共通です。
大工
丸太のままの木を用いることもあるので、作業場には、製材品だけでなく大工が見立てた原木がストックされていることももあります。チョウナではつり、墨付けします。曲がりのある丸太でも正確に墨を出せる大工の知恵があります。
現場で木組みで組み上げられるよう、墨を付け、女木と男木の刻み加工をほどこします。
いよいよ材料を現場に持ち込み、木組みによる架構を順序よく組み上げていきます。棟が上がると、祝いの餅をまく習慣があります。
ほか、多くの職方
建築は、軸組だけでは成り立ちません。屋根がかかり、壁がつき、床ができ、建具が入ることで、仕上がっていきます。堂宮の場合、錺や彫刻も大事な要素となります。
屋根葺師(瓦、板、萱)
軸組の基本は共通でも、屋根が地域の風景のバリエーションを決めるといってもよいほど、屋根は気候風土や建物の性格をあらわすものです。
左官
壁には板壁と土塗り壁があります。塗る仕事は、左官職がしますが、壁土をつくったり、下地を編んだりする仕事もあります。
建具・畳
壁にしない開口部は、開け閉てのできる板戸、襖、障子、ガラス戸などが入ります。床を板敷きでなく畳敷きにすることもあり、これは和の建築空間には欠かせない要素です。
襖
板戸のような木製建具や障子の枠までは建具屋がつくりますが、障子の紙を貼ったり、襖を作ったりする仕事は経師・表具師がします。襖に張る柄の入った紙を「からかみ」と言い、気の版木にキラ(雲母)・胡粉(貝殻粉)・金銀箔・粉を入れた顔料などの自然な彩りをのせて、美しい模様を摺り出します。
彫り・錺(かざり)
社寺建築では、虹梁に彫刻をしたり、仕上げに錺金物をつけたりという仕事もあります。いずれも精巧な技が集約した仕事です。
道具を作る人たち
上記のすべての職人たちは、手の延長となる刃の道具があってこそ、はじめて仕事ができます。日本の刃物は、鉄と鋼のバランスの取れた、研ぎやすさと切れ味とがうまく調和する高度な技術でできています。
道具鍛冶
鉋、鑿、のこぎりなどをひとつひとつ手作りする鍛冶職。