この運動について

有名な社寺から日本の美しい町並みや原風景をかたちづくる民家や町家まで、日本の伝統建築はみな「伝統構法」でできています。世界遺産登録される伝統建築物が年々増える一方で、それを作る技術である「伝統構法」は、効率最優先の価値観や日本人の生活スタイルの変化などにより、存亡の危機に瀕しています。「日本の宝」を作る技術と生業とを未来につなげるために「伝統構法をユネスコ無形文化遺産に!」という目標を掲げました。

 
日本建築の匠の技 伝統構法をユネスコ無形文化遺産に!

日本文化の基盤である「伝統構法」を、世界の宝に

日本の気候風土から生まれ、原風景を織りなす和の建築は「伝統構法(伝統木造技術)」とよばれる職人技術で造られています。千年以上もの長い間、連綿と伝えられてきたその技術は、自然に対抗するのではなく、融和・共生する自然観に依拠し、その要は「木のいのち」を最大限に活かすことにあります。

「伝統構法」は、日本人の暮らしを支え、すばらしい伝統文化を花開かせた「和」の基盤技術です。それは堂宮・数寄屋・民家を通底する技術であるばかりでなく、素材、資材、道具とそれらの生産・流通を担う人々の育成まで、総体的なものです。どれが欠けても日本の建築文化を生きた形で継承していく事はできません。ところが、質より量、効率最優先の価値観の中で、ひとつひとつが存亡の危機に瀕しています。

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(左より) 1. 石場建ての新築民家(写真協力:けやき建築設計) 2.美しい木材を産する吉野の山(写真協力:坂本林業) 3.木組みによる架構 4.高知県吉良川の土佐漆喰塗りの民家(撮影:持留和也)

貴重な木造技術文化をこの世代で消滅させてしまわないために

ユネスコでは「1. 人類の創造的才能の傑作としての卓越した価値 2. 共同体の伝統的・歴史的ツール 3. 民族・共同体を体現する役割 4. 技巧の卓越性 5. 生活文化の伝統の独特の証明としての価値 6. 消滅の危険性」を満たす民俗文化財を、無形文化遺産 Intangible Cultural Heritage として位置づけ、保護継承をはかっています。

日本文化の基盤でありながら存亡の危機にあるこの「伝統構法」を私たちの世代で消滅させてしまうわけにはいきません。国内において「伝統構法は世界に誇る日本の宝である」という国民的な認識を高めていかなければなりません。そのために「無形文化遺産登録」をめざすこととします。

2014年末、この主旨に賛同する伝統木造関係者、文化人、有識者が呼びかけ人となり「伝統木造技術文化遺産準備会」という推進母胎を立ち上げました。2015年3月28日には京都市下京区にある「ひと・まち交流館 京都」でキックオフフォーラムを開催し、本格的に活動を開始いたしました。

伝統木造技術文化遺産準備会

代表 中村 昌生
京都工芸繊維大学 名誉教授
一般財団法人 京都伝統建築技術協会 理事長
一般社団法人 伝統を未来につなげる会 会長

会長 挨拶

中村 昌生(京都工芸繊維大学 名誉教授)

masao太古から自然と共生してきた日本人は、その暮らしの中から家づくりの技術をつくり上げてきた。それが「伝統構法」である。自然と共に呼吸する住まいから、独自の生活文化(茶・花・香など)を発達させた。この家づくりの技が廃れるならば伝統文化も廃れるに違いない。この世界に比類のない伝統技術(大工、左官、屋根、建具、畳など)が無形文化遺産に登録されるよう、力を尽くそうではありませんか。

呼びかけ人代表 挨拶

梅原 猛(哲学者・文化勲章受賞者)

umehara伝統建築を未来に伝えることによって、
日本人が古くから営み続けた、自然との共生、
木材資源の流通、森林の活性化など、
ほんらいの日本の姿と心を復活させるであろう。

出典:一般社団法人「伝統を未来につなげる会」会報誌『伝統を未来に』第一号より

大工棟梁たちも呼びかけ人に

直井光男棟梁と小川三夫棟梁

ogawa_naoi西岡常一棟梁とともに薬師寺の金堂や西塔の再建にかかわった直井光男棟梁、西岡棟梁の唯一の内弟子であり、師を通しての伝統構法の教えを分かりやすく伝えてくださる小川三夫棟梁も、この運動の呼びかけ人になってくださっています。